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*は筆頭or責任著者論文です。

カーボンナノチューブの融合

Coalescence of carbon nanotubes whilepreserving the chiral angles

グラファイト性ナノカーボン分子を原子レベルで正確に合体させることは、sp²炭素化学における最も困難な課題の一つです。本研究では、同じ構造(キラル指数 (n, m))を持つ二本のカーボンナノチューブが、1000℃未満の熱処理によって、元の構造(キラル角)を保ったまま一本の太い(2n, 2m)ナノチューブへ効率的に融合することを発見しました。最も効率的なケースでは、この(2n, 2m)ナノチューブが最終試料の約20~40%を占めるほど高収率で得られ、融合によって生じた新たな光吸収ピークも観測されました。この反応効率はナノチューブの構造に強く依存することから、炭素-炭素結合の切断と再結合が順次進行するというメカニズムが示唆されます。これらの知見は、大径ナノチューブを構造的にねらい通りに合成する技術や、ナノチューブ集合体の特性を後処理で改質する技術への新たな道筋を開くものです。

A. Takakura, T. Nishihara, K. Harano, O. Cretu, T. Tanaka, H. Kataura, Y. Miyauchi* Nature Commun. 2025. https://www.nature.com/articles/s41467-025-56389-6

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カーボンナノチューブ薄膜の複屈折特性*

Birefringence properties of carbon nanotube membrane

単一カイラリティのカーボンナノチューブだけでできた薄膜は、フォトニクスや熱光学への応用が期待されています。ナノチューブ自体の光学異方性から、薄膜も異方的だと考えられます。しかし、異方的な複素屈折率スペクトルは報告されておらず、ナノチューブを使ったデバイスの光学設計を妨げる要因の一つでした。今回、我々は、偏光および角度分解反射測定系を構築し、ナノチューブ薄膜の異方的な複素屈折率スペクトルを実験的に決定しました。ナノチューブ薄膜は一軸性の複屈折物質で、表面垂直方向は垂直励起子に支配されていることがわかりました。本研究により、ナノチューブ薄膜を用いた、多様なフォトニック・デバイスや熱光学デバイスのより正確な設計が可能となります。

H. Wu, T. Nishihara*, A. Takakura, K.  Matsuda, T. Tanaka, H. Kataura, Y. Miyauchi*, Carbon 2023. http://dx.doi.org/10.1016/j.carbon.2023.118720

[関連文献]

西原大志*, 自作簡易エリプソ分光による熱ふく射物性計測, 熱物性, 2023, 37, 100–104.

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